大谷研プロジェクト
内容
大谷研究室では,2004年度から2016年度まで,より実用的なシステムの設計と構築を目指したプロジェクトに取り組んできました.学内の教職員をクライアントとするシステム開発について,卒研生(学部4年生)が仕様を設計し,事例研生(学部3年生)がシステムを構築します.これまでに,学生や教職員の学内におけるさまざまな作業・業務を支援するシステムを構築し,作業の効率化と紙の使用量削減に貢献してきました.また,開発に関わった学生は,システム開発の上流工程と下流工程を実体験することで,システムエンジニアに不可欠な技術や知識,コミュニケーション能力を身につけています.
なお,本プロジェクトに関わる作業は,構築を担当する事例研生にとっては必修科目「事例研究」の単位を取得するための必須課題であり,仕様設計を担当する卒研生にとっては単位取得にまったく関係のないボランティア活動です.
目的
- 学生にシステムエンジニアとしての素養を身につけさせる
- プログラミング技術
- 仕様設計技術
- コミュニケーション能力
- チームワーク
- 職員・教員・学生の作業を効率化する
- 紙の使用量を減少させる
- 職員・教員・学生の交流の機会をつくる
プロジェクト関係者と役割
- 院生:要件定義作成
- 卒研生(希望者):仕様設計
- 事例研生:システム構築,マニュアル作成
- 教職員:発注,納品チェック
- 大谷:営業,運用,学生が卒業した後のクレーム対応とメンテナンス
年間スケジュール
- 3~4月:課題決定《大谷》,要件定義作成《院生》
- 5~7月中旬:仕様設計《卒研生》,Perlの学習《事例研生》
- 前期最終ゼミ:仕様説明会《事例研生・卒研生》
- 夏休み:システム構築《事例研生》
- 後期初回ゼミ:コンペ《依頼者・研究室メンバー》
- 10~11月:勝者のシステムの統合《コンペ勝者》,マニュアル作成《コンペ敗者》
- 11月末:仮納品《コンペ勝者》
- 12月:修正作業《コンペ勝者》
- 12月末:納品&運用開始《大谷》
願望とこだわり
- 情報の"また聞き"を体験させたい
⇒ システムに関する要望は,顧客→大谷→仕様設計担当者→構築担当者と伝えるようにして,複数の人を介した情報伝達はとても難しいことを実感させます.
- 顧客はわがままであることを理解させたい
⇒ 納品以降は依頼者と直接やり取りさせて,顧客は無理難題を言ったり,前に言ったことを簡単に覆したりするのだと実感させます.
- 専門外の人への話し方を身に付けさせたい
⇒ 依頼者はコンピュータに長けていない人なので,内部処理の方法について説明したり,専門用語を使って説明したりしても理解できません.誰にでもわかる言葉で必要なことだけを簡潔に説明することの意義を学ぶ機会を与えます.
- システム構築の満足感を経験させたい
⇒ ブラウザで動くウェブシステムを対象とすることで,インタフェース部分の構築のハードルを下げ,システム構築の達成感を感じやすくします.
- 内部の仕組みを理解させたい
⇒ さまざまな処理の詳細を自分で考え,プログラムとして表現する力を身につけるために,PHPではなくPerlで記述されたCGIとします.また,既存のデータベースシステムを使わず,CSVファイルでデータベースを構築することで,データベースの仕組みや役割を理解させます.
成果
報告
- 大谷紀子, "実用的なシステムの設計と構築によるシステム開発能力の育成", 武蔵工業大学環境情報学部紀要, 第九号, pp.117-123, 2008.
- 大谷紀子, "実践的システム開発経験の意義と効果", 東京都市大学教育年報, 第21号, pp.176-180, 2011.
- 大谷紀子, "顧客のワガママを体験するプロジェクト ~学生による学内業務支援システム構築の取組みと効果~", 日本プロジェクトマネジメント協会第162回例会, 2012.
- 大谷紀子, "人工知能の研究とシステム構築 ~大学におけるシステムエンジニア育成の取組み~", 日本プロジェクトマネジメント協会PMシンポジウム2014, 2014.