7/16 1限:地球環境問題 + 2限:世界システム

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日本の環境社会学は「地球環境問題」という問題提起の仕方に違和感を持ってきました。それは,これまでの環境問題と違って,公害でくるしんでいる人々や地域に暮らしている人々から発せられた問題提起ではなかったからです。そして,「地球環境問題」という問題提起によって,地域の問題や格差の問題が見えなくなってしまう場合もあるからです。そこで,「地球環境問題」を地球規模で進行している経済のグローバル化が引き起こす環境問題として考え直してみましょう。


地球環境問題とローカリティ―「地球環境問題」という問いの立て方?―

世界システム論の視点

近代化論(modernization theory)への疑問

従属理論(アンドレ・G.フランク,サミール・アミン)

世界システム論(イマニュエル・ウォーラーステイン『近代世界システム』1974~,など)

World System

資本主義は,商品の「売り手」と資源や労働力の「買い手」の二つの顔を持つ.「売り手」としては,全てを商品化して市場を拡大する.「買い手」としては,できるだけ貨幣を払わなくて済むように商品化を抑制する(市場外部化).これを可能にするのが,中核国と周辺国を国境で分離することによって起こる「不等価交換」貿易である. 不等価交換=労働によって得られた生産物の価値(労働価値)は,貨幣を介して同じ価格で交換すると,強制労働などで安価に大量に生産する地域から,賃金労働で少量生産する地域へと移される.結果として,周辺から中核へと価値の移動が起こり,中核はますます富裕に,周辺はますます貧困になる.=不均等発展

Pollution Export

受益圏は拡大するが,まだ外部はある.受益圏と外部には,経済的・政治的格差が存在するため,受益圏の外部に捨てる限りは,「問題」として認識されにくい.

アメリカの環境運動のなかで生じた考え方に,環境正義(または環境的公正)があります。1980年代にアフリカ系や先住民の居住地域に廃棄物処理施設が多く建設されようとしていることに抗して,人種や民族や職業に関係なく,全ての人が公平に環境問題による被害から保護され,また自然環境からの恩恵を受けることができなければならないとする社会運動が起こったものです。これは,日本の公害問題で差別と闘ってきた反公害運動と似ていますが,アメリカの場合,1960年代の公民権運動の流れにあるものとして捉えることができます。そして,環境正義の考え方は,国際的な開発問題においても,重要な考え方として受け入れられています。

環境正義概念の経緯

環境正義の定義

環境正義を実現するために何が必要か

環境正義は理念であり,それを実現するためには現実の正確な記述と,なぜそうなったのかについての歴史的・因果的な説明が必要である。

異議申し立て

事例:オーストラリアのウラニウム鉱山

kakadu

2011年4月,英国インデペンデント紙 (http://www.independent.co.uk/news/world/australasia/)

世界中を震撼させた福島原発事故だが、オーストラリアの北部特別地域に住む先住民ミラル氏族が受けた衝撃も例外ではなかった。契約にサインすれば巨額の富を約束されているにも関わらず、彼らの土地で行われるウラン鉱石採掘を制限する意志を固めている。

先祖代々ミラル氏族が所有してきた土地からは30年以上もウランが採掘され続け、世界中に輸出されている。福島原発を運営する東京電力も主要な鉱山である「レンジャー」の長年にわたる顧客だ。ミラル氏族の長老であるYvonne Margarulaは、パン・ギムン国連事務総長に、ミラル氏族の人々が日本の惨状を心配し原子力の緊急事態について懸念している旨を手紙に書いて送った。「日本の原子力会社とオーストラリアのウラン鉱山会社との長年にわたる関係をみると、福島原発の放射能事故は、我々の土地から採られたウランが、少なくとも原因の一部であるようだ。このことを我々は非情に悲しく思っている」とMargarula は言う。 また、長老Margarulaは事務総長に、2つ目の鉱山となる世界最大の未開発のウラン鉱床「ジャビルカ」での採掘反対をさらに強めていく決意と共に、ジャビルカ鉱床が世界遺産指定のカカドゥ国立公園の一部になることを希望すると伝えた。

ウラン採掘はこの地域で長年問題となっている。レンジャー鉱山は英国系の採掘会社大手Rio Tinto(リオティント)の子会社Energy Resources(ERA)が運営しているが、もともとミラル氏族の反対のなか操業を開始した。ジャビルカ鉱床もまたERAが賃貸権を有するが、ミラル氏族の呼び掛けにより何千人もの人々が8ヵ月におよぶ封鎖運動をした1998年以来放置されたままだ。土地の所有者達はレンジャー鉱山のロイヤリティとして2億オーストラリアドル以上を受け取っているが、長老Margarulaは2005年の議会での質問に対して、「アルコールに手を出すものが多くなり、お金に関しての口論も増え、鉱山が完全に彼らの生活を変えてしまった」と答えている。また、「水路や小川は永遠に失われ、有害な岩がうずたかく積まれ、有害なドロで埋まった巨大な穴ができ、彼らの土地は破壊されてしまった」とも述べた。

レンジャー鉱山とジャビルカ鉱床はカカドゥ国立公園の境界線にあるため、世界遺産登録の際に除外された。およそ70人いる土地所有者は契約すればオーストラリアでも有数の長者になることは確実だ。それにも関らず、彼らは、これらの土地が永遠に保護されることを願っており、2005年以来、開発に対して拒否権を行使している。

2011年4月16日 Radioactive threat looms in Kakadu (http://www.smh.com.au/environment/)

世界最大級オーストラリアウラン鉱山がシャットダウン 放射能高汚染水の漏出に打つ手なし

→農業情報研究所http://www.juno.dti.ne.jp/tkitaba/earth/nuclear/news/11042001.htm

2013年12月 ミラル・ネット(http://www.mirarr.net/)より

レンジャー鉱山のウラン製錬設備でタンク破損,ウラン硫酸溶液100万リットル漏洩か

→「ジャビルカ通信」細川弘明氏http://savekakadu.wordpress.com/