7/23 1限:歴史的環境保全の運動/景観の形成 + 2限:レポート課題A解説

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環境社会学では,歴史的な建造物,町並み,景観などの保全も広い意味での環境問題・環境共存の取り組みと考えて研究対象としてきました.開発によって存続の危機にさらされた歴史的環境に対する保全活動は,自然環境の保全活動とたいへんよく似ています.


歴史的環境の保全

Mt.Fuji富士山は文化遺産である!

歴史的環境(historic environment)=歴史的遺産が集中して存在することでつくり出されている一定の場。何が歴史的遺産かは地域や民族によって,また時代によって異なる。日本の場合は,自然環境と歴史的環境を一体と考える発想が特徴的である。

第1次歴史的環境保全運動:開発と保存の対立

事例:鶴岡八幡宮裏手の宅地造成問題と鎌倉風致保存会―日本のナショナル・トラスト第1号

ナショナル・トラスト(National Trust for Places of Historic Interest or Natural Beauty)=史的名勝や自然的景観地の所有権を確保し国民の利益のために永久に保有する民間組織。英国が発祥。
1960年ごろ  鎌倉の宅地造成開発ラッシュが起こる.
1964年1月  鶴岡八幡宮裏山「御谷(おやつ)」の宅地造成計画に対し,地元住民を中心に反対運動が起こる.この運動に大佛次郎はじめ,鎌倉在住の多くの著名人が参加する.
1964年12月  財団法人鎌倉風致保存会が発足する.
1965年11月  風致保存会が保存区域69ヶ所約850haを認定する.
1966年1月  風致保存会の運動が契機になり「古都保存法」が制定される.
1966年6月  御谷山林1.5haを,市民・企業からの寄付金900万円と鎌倉市からの600万円を合わせ,1500万円で買収し保存する.(この活動によって風致保存会は日本のナショナル・トラスト第1号と言われる.
1967~79年  しばらく活動が休眠状態になる
1979年  風致保存会の活動を再開する.
1983年4月  保存建築物第1号として「大佛次郎茶亭」を指定し保存の助成をする.
1984年10月  「十二所果樹園」の一部1.9haの土地を賃貸し保存する.
1988年12月  「十二所果樹園」の土地を追加賃貸.合計3.8haとなる.
1990年3月  鎌倉文学館の東側山林「笹目緑地」1.2haを買収し保存する.
1996年4月  風致保存会の事務所が鎌倉市役所より由比ケ浜二丁目の仮事務所へ独立する.
1997年7月  鎌倉市景観重要建築物に指定された「旧安保小児科医院」を事務所として借り受け保存に協力する.
1998年1月  会員制が発足する.
1999年4月  「鎌倉の世界遺産登録をめざす市民の会」が設立され,事務局を風致保存会の中に置く.
1999年10月  風致保存会創立35周年を記念して第17回ナショナル・トラスト全国大会を鎌倉で開催する.
2004年12月  風致保存会創立40周年を迎える.

第2次歴史的環境保全運動:開発としての保存

事例:竹富島憲章―町並み保全による観光開発―

竹富島憲章前文「われわれが、祖先から受け継いだ、まれにみるすぐれた伝統文化と美しい自然環境は、国の重要無形民俗文化財として、また国立公園として島民のみならずわが国にとってもかけがえのない貴重な財産となっている。全国各地ですぐれた文化財の保存と、自然環境の保護について、その必要性が叫ばれながらも発展のための開発という名目に、ともすれば押されそうなこともまた事実である。われわれ竹富人は、無節操な開発、破壊が人間の心までも蹂躙することを憂い、これを防止してきたが、美しい島、誇るべきふるさとを活力あるものとして後世へ引き継いでいくためにも、あらためて『かしくさやうつぐみどうまさる』(賢くさや睦みどう勝る:なににも勝る賢さは一致協力すること)の心で島を生かす方策を講じなければならない。われわれは今後とも竹富島の文化と自然を守り、住民のために生かすべく、ここに竹富住民の総意に基づきこの憲章を制定する」。

景観緑三法(2005年)

景観を保全するために,地方自治体を中心に国や地域住民やNPOとの協力体制をつくるための法律.不動産開発や公共事業を規制するための法律ではない.

景観とは何か?