なぜ異なった社会では環境問題のとらえ方が違うのか?
質問紙調査のデータ分析をやってみよう!

レポート課題の素材の解説

Q8(英語版の質問紙ではQ7)  環境にかかわる問題についておたずねします. 次のa,bそれぞれについて,あてはまる番号に1つずつ○をつけてください.
a.次の1~9の中で,あなたの国・地域で最も重大な問題は何だと思いますか.(○は1つ)
b.それでは,あなたや,あなたの家族に最も影響を与える問題は何だと思いますか.(○は1つ)

1. 大気汚染,2. 化学薬品や農薬,3. 水不足,4. 水質汚染,5. 放射性廃棄物,6. 家庭ゴミの処理,7. 地球温暖化,8. 遺伝子組み換え食品,9. 天然資源の枯渇,10. この中にはない

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レポート課題の進め方

  1. ネットワークドライブ"ycResources"の環境社会学フォルダから以下のファイルをダウンロードします.
    • レポート課題データ.xlsx
      質問紙調査の結果の一部をまとめたデータのエクセル・ファイルです.上にグラフで示したQ8a.の各国の数値(選択肢を選んだ比率をパーセントで表わす)のほか,環境問題についての知識,社会的信頼や政治観,科学観に関する質問の回答(5段階尺度)を国ごとの平均値で表わしています.
    • レポート課題質問紙.pdf
      上のデータを得る際に用いられた質問紙(日本語)をPDFファイルにしたものです.実際の質問文や選択肢を見ることができます.他国ではもちろん現地語の質問紙を用いています.
  2. エクセルを用いてデータ分析をするためにオプションで「分析ツール」アドインをアクティブにします.
    • 「ファイル」→「オプション」を選択し,「Excelのオプション」ウィンドウを開きます.
    • 左側の選択肢で「アドイン」をクリックすると,エクセルにオプションで付けることのできる付属プログラムのリストが現れます.下側の管理(A):Excelアドインの右側の「設定」ボタンをクリックします.
    • 現れた「アドイン」ウィンドウで「分析ツール」にチェックを入れて「OK」をクリックします.これで,エクセルで「分析ツール」を使うことができるようになります.
    • ワークシートに戻って「データ」タブをクリックします.ツールバーの右端に「データ分析」ボタンが現れています.
  3. いよいよ分析です.最初に,特定の環境問題への関心がどのような社会的要因(政治や経済や科学に関する人々の意識)と関連しているのかを相関分析で調べます.
    • データのあるワークシートで「データ分析」ボタンを押すと,分析方法のリストが現れます.ここで,「相関」を選択して「OK」を押しましょう.
    • 「相関」のウィンドウで「入力範囲」には国名の列を除いた全データを選択します.「先頭行をラベルとして使用」のチェックボックスにチェックを入れます.「OK」を押しましょう.全体の相関表が新規ワークシートに出力されます.数値は相関係数です.
    • 相関係数=2変数間の関連性を表わす指標.0から±1の間の値を取り,0は無相関,+1は正の完全な相関,-1は負の完全な相関.どの程度の数値で有意味な相関があるかどうかは,データの数にも依存するので確実には分かりません.しかし,相関係数が0.5を超えて(あるいは-0.5を下回って)いれば,かなりの相関があると考えて良いでしょう.統計学的な有意性については,次の回帰分析が必要になります.
  4. 次に,相関係数が高かった環境問題と社会的要因を選んで,回帰分析を行います.回帰分析は,ある数値変数Yの変動を別の数値変数Xの変動で説明する方法です.YはXの1次関数として表わされ,この1次関数の傾きを回帰係数と 呼びます.この課題では,特定の環境問題をY,社会的要因をXとして,回帰分析を行います.例として,「地球温暖化」を「F2.年齢」で説明してみましょう.
    • 「データ分析」ボタンを押し,今度は「回帰分析」を選択します.
    • 「回帰分析」のウィンドウで「入力Y範囲」に「地球温暖化」の列を,「入力X範囲」には「F2.年齢」の列を入力します.「ラベル」のボックスにチェックを入れると,選択した入力範囲の先頭のセルをラベルとして扱います.「観測値グラフの作成」にもチェックを入れましょう.
    • 出力は下のようになります.まずは,真ん中の「分散分析表」の「回帰」の行,「有意F」の列の値を見ましょう.「有意F」の値が0.05未満であれば回帰分析の結果は統計学的に有意,つまりY「地球温暖化」をX「年齢(その国の回答者の平均年齢です)」によって説明することには意味があると推定されます.次に,一番下の表の「F2.年齢」の行の「係数」の値をみましょう.これが「回帰係数」で,Xが1単位増えた時にYが何単位増加するかを表わします.この場合は,その国の調査対象者の平均年齢が1歳高くなるときに,「地球温暖化」を選んだ人の比率がどの程度高くなるかを表します.この場合は,1歳ごとに1.2%ずつ増える傾きになっていて,高齢化している国ほど「地球温暖化」を選ぶ傾向が高まることがわかります.同じ表の「F2.年齢」の行の「P‐値」は回帰係数をt検定したものですが,前述の「有意F」の値と同じになります.最後に,「回帰統計」の表の「重決定R2」の数値を見ましょう.これは,Xの変動がYの変動にどの程度影響を与えるかについて,その寄与率を表わす数値です.この値も0から1の間を動き,1に近いほど寄与率が大きくなります.0に近い場合は,Yの変動に影響を与える他の重要な要因が存在することを示します.
    • 観測値のグラフは出力ではつぶれているので引っ張って見やすくしましょう.青の点が実際のデータ,つまり個々の国のデータを表し,赤の点が1次関数に回帰した値を示しています.ここで,青の点にカーソルを移動すると,座標(X,Y)の数値が現れます.この数値をワークシートで探すと,その点がどの国かを知ることができます.例えば,一番右側の年齢が最も高い点はカナダです.逆に左側の最も若い点はトルコです.このようにして,具体的にどんな国が若くて温暖化に関心が薄く,あるいは高齢で温暖化に関心が高いのかを調べることができます.
  5. 最後に,なぜ特定の環境問題Yが特定の社会的要因Xで説明できるのか,その理由を考察しましょう.この例では,高齢化が進むと温暖化への関心が高くなることがわかりますが,それはどうしてでしょうか.高齢化が進んでいる国はすでに工業化したいわゆる「先進国」です.これらの国々の政府は温室効果ガスの抑制に相対的に熱心です.しかし,高齢化が進んでいなくて,これから工業化によって経済発展しようとする国々は,温室効果ガスの抑制に熱心ではありません.つまり,その国の政府や産業界がどのような利害関係を持っているかによって,国民の環境問題への関心が異なってくるのではないかと考えられます.

レポートの作成と提出

上に挙げた例以外で,特定の環境問題(Y)と特定の社会的要因(X)について回帰分析を行い,統計学的に有意な関係を見つけましょう.レポートには,選択したX,Yの変数,有意F値,回帰係数,重決定R2を書き,なぜそのような説明ができるのか考察を文章で書きなさい.文字数の指定はありません.形式は自由です.グラフは必要ありません.ワード互換ファイルで作成し,7月9日(月)17時(締め切り厳守)までにWebclassに提出しなさい.レポート文頭にも氏名と学籍番号を忘れずに記入すること.