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平成20年度卒業論文発表 タイトルはキャンパス屋上における湿地ビオトープパッケージに関する研究ービオトープパッケージのヒートアイランド緩和効果及び生物への影響ー
発表者の藤瀬と石井です。宜しくお願いします。
背景と目的です。
長年の累積的な開発により緑地が減少しました。その結果、野生生物のハビタット減少、ヒートアイランド現象、地球温暖化、都市型洪水といった問題が顕在化しました。 そこで、都市域における緑地の復元・創造の手段として屋上緑化が注目されています。 しかし、現在の屋上緑化は、野生生物のハビタット機能を考慮していない。大掛かりな施行を必要とする。といった問題があります。そこで、本研究室では解決策の1つとして、ビオトープパッケージを提案しました。 本研究では、ビオトープパッケージを設置した場合の効果を検証することとし、以下2点を研究目的としました。 1つ目は、ヒートアイランド緩和効果の高いビオトープパッケージ。2つ目は都市で失われてきたハビタット機能の代償となるビオトープパッケージについてです。
次に、研究方法です。
はじめに、1つ目の研究目的であるヒートアイランド緩和効果の高いビオトープパッケージについての検証方法です。 ビオトープパッケージの構成要素の違いによる断熱効果と大気温への影響を検証するため、以下の8つのタイプの容器を設置しました。 タイプ1が容器のみ、タイプ2水のみ、タイプ3植物のみ、タイプ4土のみ、タイプ5土植物、タイプ6水植物、タイプ7水土、タイプ8水土植物です。
こちらが測定方法です。測定には温度測定器を用いました。測定は、容器を設置していない屋上のコンクリート面及び、容器直下のコンクリート面を20089212から翌3日の11時まで。 大気温に関しては、容器の5cm上と屋上の大気温を93日の12時から、翌4日の11時まで、それぞれ毎時間ごとに測定しました。
こちらが、ヒートアイランド緩和効果の高いビオトープパッケージについての研究の流れです。 高いヒートアイランド緩和効果が期待できるタイプを検証するため、容器直下のコンクリート面温度、及び容器上の大気温ついての結果をそれぞれ順位をつけ、2つの結果を総合的に見て検証します。
次に、2つ目の研究目的である都市で失われてきたハビタット機能の代償となるビオトープパッケージについての検証方法です。 まず武蔵工業大学横浜キャンパス情報メディアセンター屋上に湿地型のビオトープパッケージを施工しました。施工を行うにあたって、対象地周辺の自然環境調査をし、植栽植物を選定しました。 どのような生物がビオトープパッケージを利用しているのか確認するため、モニタリングを目視観察で、月・水・金の週3回行いました。
こちらが、都市で失われてきたハビタット機能の代償となるビオトープパッケージについての研究の流れです。 モニタリング結果により、鳥類、及び昆虫類が何種ビオトープパッケージを利用しているのか調べ、ビオトープパッケージが都市で失われてきた野生生物のハビタット機能の代償となっているか検証します。
では、研究結果です。
はじめに、ビオトープパッケージの企画・計画・施工です。
ビオトープパッケージの基本理念である復元目標を定めるため、都市域においてどのようなタイプの緑地が失われてきたかを調査しました。 その結果、横浜市の湿地・及びその他の緑地の割合は、このように、湿地の減少が緑地の減少よりも大きいことがわかりました。
こちらがビオトープパッケージの設置場所です。(3秒)
こちらが、実験場所である情報メディアセンター屋上の図面です。(3秒)
こちらが、ビオトープパッケージの主な構成図です。(3秒)
こちらが容器直下のコンクリート面の温度測定の結果図になります。今回最も平均温度が低いと予想したタイプ8は赤い線のものとなります。
水・土・植物などの要素を加えたタイプの容器は、容器を設置していないコンクリート面やタイプ1(容器のみ)と比較すると平均温度5度以上減少することが判明しました。 また、日中はタイプ5(土+植物)の容器が最も温度が低くなり、日没後はタイプ2(水のみ)の容器が最も温度が低くなることが判明しました 平均温度はタイプ5(土+植物)28.3と最も低くなった。タイプ8(水++植物)28.5℃となり、わずかながらタイプ5(土+植物)を下回る結果となりました
予想と反する結果となったため、それぞれのタイプごとに細かく分析してみました。
まず始めにタイプ2(水のみ)です。タイプ2平均温度29.5となりました
このタイプは日中では毎時間ごとの最低温度よりも5度以上高い値を記録するほど度が上昇
日没後は全てのタイプの中で最も低い温度を記録することが判明
タイプ3(植物のみ)は平均温度30.2℃となりました。
これはタイプ1(容器のみ)、容器を設置していないコンクリート面に次ぐ今回の測定の中では3番目に温度が高い結果であります。
タイプ4(土のみ)は平均温度28.4℃となった。
この数値はタイプ1(容器のみ)タイプ2(水のみ)タイプ3(植物のみ)と比較すると最も平均温度が低い値となります。
今回行った測定で最も低い値を記録したタイプ5(土+植物)の平均温度は28.3℃となった。
これは今回行った測定の中で最も低い値を記録です。
タイプ2(水のみ)の検証によると水が日中に高温になる傾向があり、その「水」が含まれていないため、温度が上昇しなかった。
タイプ8(水+土+植物)の平均温度は28.5℃となりました。
これはタイプ5(土+植物)の平均温度28.3℃に次ぐ低い値である。
予想と反する結果となったのでタイプ5(土+植物)との違いを比較し、検証を行った
タイプ5(土+植物)12時から翌日の深夜1時にかけて温度が低くなりその後、ゆっくりとタイプ8(水+土+植物)の温度が下回る。その差は日が出始める早朝に差は広がっていくことが判明しました。 これは、タイプ8(水+土+植物)の構成要素である「水」は比熱が大きいために温まり難く、冷め難い物質であること要因だと考えられます
こちらは容器上の大気温の温度測定結果の表となります。背景が黄色のものが毎時間ごとの最低温度となります。
タイプ8がほぼ全ての時間で最低温度となっていることが分かると思います。
測定の結果、ほぼ全ての時間でタイプ8(水+土+植物)の温度が低いことが判明しました。 タイプ8(水+植物+土)の平均温度が27.0℃となりタイプ5(土+植物)27.7℃となりました。 特に日が強くなる日中に温度の違いが生じる事が判明し、タイプ8(水+土+植物)が高いヒートアイランド緩和効果を有している結果が出たと言えると思われます
次に、ビオトープパッケージのモニタリング結果です。
今回鳥類ではこちらの4種を確認することができました。この4種は対象地周辺に生息している生物です。
主に水飲み場、水浴び場として利用していました。
こちらが、今回確認することができた昆虫類です。今回は12種を確認できました。
特に、こちらの米印がついているショウジョウトンボ、ギンヤンマのヤゴは平成18年・19年度のビオトープパッケージでは確認されなかった種であります。
こちらが観察できた昆虫類の一部です。
ギンヤンマやアキアカネの幼虫、キアゲハの幼虫が確認されたことから屋上のビオトープパッケージがハビタット機能を有していると考えられます。またオオスズメバチがビオトープパッケージ内の水を利用している様子も確認されました。
結論とまとめです。
まず1つ目の目的であった、ヒートアイランド緩和効果の高いビオトープパッケージについてです。 検証の結果、水土植物のタイプが、容器直下のコンクリート面温度では8タイプの中で、2番目に低い結果となり、容器上の大気温では、最も低い結果となりました。 これらの2つの結果から、水土植物という3つの要素を組み合わせたものが、高いヒートアイランド緩和効果が期待できるタイプであるといえます。
次に2つ目の目的であった、都市で失われてきたハビタット機能の代償となるビオトープパッケージについてです。 モニタリングの結果、鳥類4種、昆虫類12種の計16種が観察できました。この結果より屋上緑化におけるハビタット復元の可能性が示唆できました。
以上の2点より、湿地ビオトープパッケージを屋上に設置することにより、ヒートアイランド緩和効果が高まり、小規模ではあるが都市域で失われてきた野生生物のハビタットの代償もできることがわかった。
しかし、都市で失われてきたハビタット機能の代償という点で、生物にとってどの程度ハビタットが代償ができたのかは不明である。そこで今後は、屋上緑化をした場合、その屋上緑化がどの程度生物に価値があるものかハビタット評価手法であるHEP用いて評価していく必要がある。
最期に、共同研究者である東邦レオ株式会社の梶川さん、尾畑さん、三田さんをはじめとした皆様、協力してくださって全てに方に、この場を持ちまして感謝の意を表します。ありがとうございました。