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 これから平成20年度卒業研究発表を始めます。タイトルは、HSIモデル普及の促進に関する研究-オオタカのHSIモデル及び査読システム作成を通して-です。
発表者樋口と廣野です。宜しくお願いします。
この写真は、栃木県で撮影したオオタカの巣です。
 まず研究の背景と目的です。
 近年、自然再生や生態系復元の動きが活発化してきています。そのような行為においては、HEPのように目標設定や成功基準を定量的に示す必要があります。こHEPでは、HSIモデルが非常に重要な役割を担います。HSIモデルとは、「ある野生生物種の生存必須条件などに関する情報を、1つの冊子に集積したもの」で、これはHSIという指数によって、ハビタットの適否が0.0から1.0の間で示されます。  一方、オオタカは2006年に準絶滅危惧種に指定され、保護方策をとることが急務となっています。しかしそれにもかかわらず、オオタカの生存必須条件を一つにまとめたツールが日本に存在していないという問題があります。このような背景から本研究の一つ目の目的を、オオタカのHSIモデルを作成することとしました。
 そして、このHSIモデルを環境コンサルタントなどがいつでも使用できるように、JSIA(環境アセスメント学会)において、こちらの「HSIモデル公開用ホームページ」というウェブサイトが運営されています。このウェブサイトでは、掲載されているHSIモデルを誰でも閲覧・利用することが可能です。またこのホームページにおける、HSIモデルの掲載までの流れは、環境コンサルタント、行政、専門家、一般の方などが新たに作成したHSIモデルを、こちらのHSIモデル公開用ホームページに投稿し、掲載されるという形になっております。  しかし現時点では、HSIモデルの投稿の段階において査読を行う仕組みがありません。それに伴って、実務的に使用しにくいHSIモデルが掲載されてしまう可能性があります。このような背景から本研究の二つ目の目的を、HSIモデルがホームページへ投稿された際の、査読システムを構築することとしました。
 また本研究は学術的な研究ではなく、 実務的な研究としました。 目的1HSIデルも、目的2の査読システムについても、研究のための研究で終わらないように、誰もが利用しやすい仕組みを追及しました。
続いて研究方法です。
オオタカのHSIモデルまず文献調査及びオオタカの専門家へインタビューをって、作成していきます。
そして、作成したHSIモデルを使用してTHUの算出を行います。THUの算出後にHSIモデルの最終的な修正を行って、完成となります。
THUは数値で表されますが、HSI値に面積を乗じることで算出されます。 簡潔に言うと、ハビタットの「質」「空間」を評価した値のことです
査読システムは、 ()日本都市計画学会、()日本造園学会、()環境情報科学センターの論文掲載までの査読の流れを参考にし、構築ていきます。
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 こちらは今回作成した、オオタカのHSIモデルのハビタット変数です。まずは営巣地から、樹林の種類、樹木の平均樹高、林の空間、森林面積の4項目を抽出しました。採食地からは、採食環境の質という項目を抽出しました。右上の図は、樹木の平均樹高におけるSIモデルで、右下の表は、採食環境の質におけるSIモデルです。
 これら適性指数の設定にあたっては、NPO法人オオタカ保護基金の遠藤孝一氏、堀江玲子氏にBPJBest Professional Judgment)を行って頂きました。 なおこのBPJとは、専門家による経験的判断のことで、数十年もの間、特定の種を研究してきた専門家の方にSI値を設定して頂くことを意味しています。
 続いてTHUの算出について述べていきますTHUを算出する目的は2つありまて、1つ目は作成したオオタカのHSIモデルが、オオタカの生息環境のポテンシャルを正しく比較評価できるか確かめること2つ目は作成したオオタカのHSIモデルを実務で使用するにあたって、問題点がないかを確認することです。
 続いてTHUの算出を行う評価区域について述べていきます。この濃い緑色で示された部分は、栃木県宇都宮市と上三川町で、さらにここから、33q四方を5区域抽出しました。この5つの区域をTHUの算出を行う評価区域とします。この3q×3q四方という距離は、オオタカの繁殖期行動圏である900haを距離に換算したものです。なお、この5つの評価区域の詳細位置につきましては、非公開にすることを条件として専門家の方にご提供頂いたため、今回の発表でお見せすることは出来ません。申し訳ありません。
 また、この5つの評価区域の内訳は、オオタカが営巣及び採食活動を頻繁に行っている区域が3区域、そのような行動がほとんど見られない区域が2区域となっております。それを表で表したものがこちらです。こちらの表の青く塗られた評価区域1,2,4が、オオタカの行動が多くみられる区域、黒く塗られた評価区域3,5が、オオタカの行動がほとんど見られない区域です。 今回THUの算出を行うにあたって、それぞれの区域を正しく比較評価するためには、青く塗られた区域のTHUが、黒く塗られた区域のTHUより高い値を示す必要があります。
  こちらは先程の表に、THUの算出結果を加えたものです。 まず大前提として、THUの値は必ず比較評価されることになっています。それぞれの区域の数値を比較した結果、数値が高い区域ほど、オオタカの生息地として適しているという評価結果になります。
今回の数値を比較すると、オオタカの活動が多く見られる区域のほうが数値は高くなっており、最も望ましい結果を導き出すことができました。
THUの算出結果における考察です。
まず作成したHSIモデルは、オオタカの生息環境のポテンシャルを正しく比較評価できる可能性があることがわかりました。 また、対象地に関するGISデータがある事と、GISを使用する技術があること。この2つの条件が整えば、今回作成したHSIモデルは誰でも使用可能であることが分かりました。
 続いて査読システムについて述べていきます。この表は、本研究で作成した査読判定表です。査読者は、上から評価種に関する情報、評価種の生存必須条件に関する情報、SI及びHSIモデルに関する情報について、右側の11つの項目を査読していきます。
 この表は先程の査読判定表の続きです。ここでは体裁に関する11項目を査読して頂きます。この、2枚のスライドにわたって記載されている査読判定表は、 HEP詳しい人物、 また、生物学あるいは農学系の専門家の2名が使用して、それぞれ個別で判定を行います。そして最終的には、この2名の個別の判定を合わせることにより決定される、総合判定が行われます。  こちらのピンク色の表は、総合判定結果の情報をまとめたものです。総合判定結果は、A:受理、B:要修正、C:却下の3つに分かれます。査読後のモデルの取り扱いについては、次のスライドで説明させて頂きます。
 このスライドは、総合判定の流れをフローチャートで示したものです。まず投稿者によってHSIモデルが投稿され、第一回査読が行われます。
 このスライドは、総合判定の流れをフローチャートで示したものです。まず投稿者によってHSIモデルが投稿され、第一回査読が行われます。
 このスライドは、総合判定の流れをフローチャートで示したものです。まず投稿者によってHSIモデルが投稿され、第一回査読が行われます。
 このスライドは、総合判定の流れをフローチャートで示したものです。まず投稿者によってHSIモデルが投稿され、第一回査読が行われます。
 このスライドは、総合判定の流れをフローチャートで示したものです。まず投稿者によってHSIモデルが投稿され、第一回査読が行われます。
 続いて考察です。始めにオオタカのHSIモデルの作成を通した考察を述べていきます。
 こちらの実務的な、使用価値のあるHSIモデルを作成するには?という問いに対して、本研究を通して2つの答えを導き出しました。1つは、専門家によるBPJが非常に重要であるということ。もう1つは、作成したHSIモデルを自分で使用してみる事が重要だということです。
この自分で使用してみる。ということについては、自分で試しにHSIモデルを使用する事で、実務でHSIモデルを使用する際の問題点が明らかになり、効果的な修正が出来るからです。
 続いてオオタカの生存必須条件についてです。
樹林の種類については、関東地方の9割以上のオオタカが針葉樹林に営巣しており、針葉樹林はオオタカの生息に欠かす事が出来ません。 樹木の平均樹高については、オオタカは15m以上の樹木に多く営巣しており、一方で、10m以下の樹木にはほとんど営巣することはありません。 こちら、林の空間については、オオタカは翼を広げると1m以上の長さになるため、樹冠の下の空間は広くなければ生息できません。
以下、森林面積、採食環境の質と続きますが、
本研究ではこのように、オオタカの保全に必要な5項目をHSIモデルにまとめることが出来ました。
今後はこのHSIモデルが実務で使用されていくことが求められます。
 続いて査読システムの構築に関する考察です。この白い線で囲まれた部分は、HSIモデル公開用HPにおける、HSIモデルの望ましい運用方法の流れを示したものです。
 まずHSIモデルが投稿され、査読を行いHPへ公開します。続いてHSIモデルは実務で使用され、何か問題点がある場合は改良を行うという流れです。 この流れの中で特に重要なことは、査読の時点でHSIモデルの質を求めすぎない事です。それは、HSIモデルは実務で使用されて、そこで始めて、重要な問題点が明らかになり、効果的な改良が出来るからです。そのため、まだ実務で使用されていない査読の段階でモデルの質を求め続けることは、実務的とは言えず、学術的な取り組みとなってしまいます。
また本研究では触れませんでしたが、HPに掲載されているHSIモデルを改良する際には、新たな査読の仕組みが必要になるのではないかと考えました。
 こちらが引用文献です。
 最後に、HSI モデルの作成にあたりご指導をいただきました吉崎真司先生、NPO法人オオタカ保護基金の遠藤孝一様、堀江玲子様、野中純様、NPO法人バードリサーチの植田睦之様、そしてご協力下さった全ての方に感謝の意を表します。本当にありがとうございました。