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これから平成21年度卒業研究発表
を始めます。タイトルは、
ハーブの踏圧に対する
耐性の研究‐
“
香りの芝生
”
造成を目的として‐
です。
発表者
の
見形です。
宜しくお願いします。
最初に本研究の背景と目的です。
今日、都市域では気温の上昇が引き起こされるヒートアイランド現象が問題となって
います。
ヒートアイランド現象への対策として挙げられるのが植物の蒸散作用を利用した緑化
による気温上昇の緩和です。
一方、昨今、ハーブは世界中で様々な形で利用されてきた。芝生におけるハーブの
利用では、ローマンカモミール等を
“
香りの芝生
”
として利用することが知られているが、
実例は少ない。これらのことから地被植物に適するハーブの積極的利用は、今後の
魅力ある都市緑地作りの可能性を広げるものと考えられます。
こうした背景を受けて本研究では、生活を豊かにする植物材料としてのハーブを用
いて視覚と嗅覚でも楽しむことのできる魅力的な芝生を作る手立てを模索することを
目的としました。
次に、研究方法です。
まず、ハーブの概念、起源について文献調査を行いました。
続きまして、
“
香りの芝生
”
を造成するため、ローマンカモミール、クリーピングタイム、
ペニーロイヤルミント、スペアミントの4種のハーブを用いてそれぞれの芝生を造成し
ました。
そして、芝生として導入するには人に踏まれるということを考慮しなければならないた
め、本研究で用いたハーブが踏圧に対してどの程度の耐性があるのかを検証する
踏圧実験を実施しました。
研究結果です。
ここではハーブの概念、起源についての説明をしたいと思います。
「ハーブ」は「草」を示すラテン語
herba
(ヘルバ)を起源とし、本来は草本の概念が強
いのですが、実際にはローズマリー、ゲッケイジュなどの木本植物も含まれます。
一般的には、有用植物の総称といえます。それらは花や葉、茎、種子、根が薬とされ
たり、芳香や香味として利用されたり、セロリのように野菜として食べられたりするもの
です。
続きまして、ハーブを用いた芝生の造成について述べていきます。
本研究ではこちらの図、及び写真に示してあります当キャンパスのロータリー沿い校
舎側の階段状地(北東面)を対象地としました。
対象地に植栽しました植物について説明していきたいと思います。
まず、植栽するにあたって選定条件として挙げたのは、芳香、匍匐性の有無です。
“
香り芝生
”
を造成するということから香り、及び匍匐性が重要であると考えました。
なお、スペアミントは特に芳香が良いため選定しました。
それぞれの植物種について詳しく述べていきたいと思います。
ロータリー側から数えて1,2段目の花壇にはローマンカモミールが植栽されていま
す。
ローマンカモミールはキク科・カモマイル属の多年草です。全草からリンゴに似た香り
がします。
他の特徴としましては、
常緑で地面を這うように横に伸び広がって育つため、グランド
カバーに利用することができます。
次に、3,4段目にはクリーピングタイムが植栽されています。
クリーピングタイムはシソ科・イブキジャコウソウ属の常緑小低木です。
野原のようなすがすがしい香りがすること、優れた薬効を持ち、マザーオブタイムと呼
ばれることが特徴として挙げられます。
5,6,7段目に植栽されているのはペニーロイヤルミントです。
ペニーロイヤルミントはシソ科・ハッカ属の多年草です。
芳香はミント特有のメントールの香りが強く、他には踏圧に強く、歩道やグランドカ
バーに向いているといった特徴があります。
最後に、8,9段目に植栽されているのはスペアミントです。
スペアミントはシソ科・ハッカ属の多年草です。
甘さと爽やかな清涼感があふれるような香りがあります。
グリーンミントとも呼ばれること、地下茎で殖えることが特徴として挙げられます。
次に芝生の維持管理についてです。
植栽しましたハーブの生育状況に併せて維持管理を行うことでハーブの芝生を良好
な状態にすること、及び緑被率を向上させることを目的としました。
上の表では、ハーブの芝生の各管理項目及びその手法を表しています。
下の表では各管理項目の実施時期を示しています。
これらがそれぞれ4種のハーブを用いて造成した芝生です。
これらの芝生は
“
香りの芝生
”
として緑の美しさだけでなく手で触れる、芝生の上を歩
く、剪定を行う、といったことを行うことで香りを楽しむことができます。
中でもクリーピングタイム、ペニーロイヤルミントの
2
種で
”
香りの芝生
”
を造成すること
ができました。
ここからは踏圧実験について述べていきます。
まず、実験期間は
2008
年
7
月
16
日〜
2008
年
10
月
1
日の期間(
78
日間)で
55
回の踏
圧実験を実施し
ました
。
次に実験方法ですが、各
段ごとに縦
30cm
、横
50cm
の試験区を
4
箇所設け、それぞ
れの試験区を
1
回の実験
における踏圧回数ごとに
0
回区画、
5
回区画、
10
回区画、
15
回区画とし
ました
。
踏圧の方法は
ゴム底の靴を使い、麦踏みの要領で行
います
。試験区の端から端ま
で踏圧を行い、片道を
1
回と数え
ました
。
試験区の配置はこちらの図の様になっています。
こちらの写真は7段目のペニーロイヤルミントにおける試験区の様子を撮影したもの
です。
なお、
6
段目(ロータリー側から)のペニーロイヤルミントは生育が十分でなかったため
、踏圧実験を実施しませんでした。
次に踏圧実験の検証方法についてです。
検証には実験期間中、
1
週間ごとに撮影した各試験区の写真を使いました。
Photoshop
を用い、撮影した写真から緑被率を算出しました。算出した緑被率の推
移、または
0
回区画と他の区画(
5
,
10
,
15
回区画)との緑被率の差の推移を検証す
ることでハーブの踏圧への耐性を調べました。
まず、グラフの説明をしたいと思います。これらのグラフは緑被率の推移を表したもの
で、横軸が日付を、縦軸が緑被率の値を示しています。
これらのグラフから、
4
種の中でもペニーロイヤルミントが高い緑被率を示していること
が読み取れます。
これらのグラフは0回区画と他の区画との緑被率の差の推移を表したものになってお
り、横軸は先ほどのグラフ同様に期間を、縦軸は0回区画との緑被率の差の大きさを
示しています。
これらのグラフから、ローマンカモミール、ペニーロイヤルミントにおいて
5
回区画が
0
回区画よりも高い値を示す箇所が見られました。
まとめと考察です。
ローマンカモミール、クリーピングタイム、ペニーロイヤルミントを用いて芝生を造成す
ることで緑の美しさだけでなく香りを楽しむことのできる魅力的な
“
香りの芝生
”
を造
成することができました。
踏圧実験の結果から、
ローマンカモミールとペニーロイヤルミントにおいて
0
回区画と
5
回区画では大きな差はなく、むしろ
5
回区画の方が高い緑被率を示す
箇所が見ら
れました
。
そのことから
数回程度の踏圧であれば植物の生育にとって良い影響を与えるのでは
ないか
と考えられます
。
4種の中でも特に
ペニーロイヤルミント
が高い緑被率の値を示しました
。
要因としては、
緑化の際に用いられることの多い
シバ
の
特性である
匍匐性に加え、高い繁殖力
を
持っていたためと考えら
れます
。
これらの結果から、株数を増やし密な状態にする、刈り込む高さを変える、匍匐性や
高い繁殖力を持った違う種類のハーブを用いて芝生を造成する、といったことに取り
組むことでより良い
“
香りの芝生
”
を造成することができるのではないかと考えられま
す。
最後に、引用文献になります。
これで発表を終わりにしたいと思います。ご静聴ありがとうございました。