学生街の殺人 東野圭吾

父「どう生きるべきかなんてことは、ちょっと年をくっているからといって話して聞かせられるものじゃない。自分でも満足にわかっとらんのだからな」
息子「そうなのかい」
父「どんな人間でも、一種類の人生しか経験することはできん。一種類しか知らんわけだ。それなのに他の人間の人生をとやかくいうことは、傲慢というもんだ」
息子「道を間違ったらどうするんだい?」
父「間違ったかどうかも、本当は自分で決めることだと思うがな。間違いだと思えば引き返せばよい。小さなあやまちをいくつも繰り返しながら、一生というのは終わっていくものではないかな」
息子「中には大きなあやまちもある」
父「それは、ある。その場合でも、その事実から目をそらしてはいかんだろうな。償う気持ちを宝にして、その後のことにあたるべきだろうな。それでなくては、生きてはいけん。たぶん、な」
息子「・・・・・・・・・」



以  上