脳に悪い7つの習慣 林成之

興味を持つことが人間の脳を発達させる。そして、「自己保存」と「統一・一貫性」

頭がいい人とは、何に対しても興味を持ち、積極的に取り組める人のこと


グチから新しい発想が生まれることはない。「否定的な言葉をいっさい、使わない」

目標と目的を明確にし、ゴールを意識せず、主体的に、自分がやってやるという意思をもって、達成のしかたにこだわる、目標の達成に向けて一気に駆け上がる。

考え、独創的なアイディアや新たな発見は、何度も何度も思考することによって生まれる。

好きなこと、感動したこと、主体的に取り組んだこと、心を込めたことは、記憶に深く残せる。

空間認知能が低い人は、数学に弱い傾向がある。

プラスの感情を込めて人に伝えることと、相手の自己報酬神経群を活性化させることにある。
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その1.「興味がない」と物事を避けることが多い

脳神経細胞がもつ本能は、「生きたい」「知りたい」「仲間になりたい」であり、脳は本能に逆らわないことを求めている。

脳は、世の中に貢献しながら、安定して生きることを求めている。

「知りたい」という本能は脳の原点。つまり興味を持つことが人間の脳を発達させる。

4歳以下の幼児は脳の構造か定まる時期、否定語は禁物。興味を持たせる時期であり、母親の声がけが大事。

第二段階の本能は、「自己保存」と「統一・一貫性」。後天的で、自我の芽生えにより顕著に。

脳は過剰反応を起こしがちである。

体内における過剰反応の例:人体の危機→血流増やすカテコラミン分泌→肝臓でグリコーゲンをグルコースへ分解、血糖値上昇→赤血球中の酸素を切り離すための物質減少→脳神経細胞の酸素が届かない→脳神経脂肪壊死

社会における過剰本能の例:多くの人が同意するもの、権威あるもの、それらしい理屈があるもの、常識とされているものなどには、「統一・一貫性」が働きやすく、「自己保存」の過剰本能が表われる。
社長が出した今一つのアイディアに賛同する役員、間違っている案に多数が同調すると、正しいように思ってしまう。など

頭がいい人とは、何に対しても興味を持ち、積極的に取り組める人のことである。


その2.「嫌だ」「疲れた」とグチを言う

A10神経群が感情を作る中枢。そこで情報に気持ち・感情のレッテルを張る。理解力・思考力・記憶力などの脳の力のパフォーマンスは「感情」によって左右される。

A10神経群障害→性格を前向きにするドーパミンの分泌減少→パーキンソン病で表情がなく、意欲減退。

「好きになる力」を養うことは、そのまま「頭を良くすること」であるといえる。苦手なことを避けるのではなく、まずは興味を持ってチャレンジしてみること。

好きになれない場合、自分で「この条件において」という前提を置いてみることが有効。

先生や上司を好きになれば、勉強ができるようになったり、仕事で活躍したりするようになる。

人間は整ったものやバランスの良いものを好む傾向にある。「自己保存」「統一・一貫性」という脳のくせ。脳のくせで、「違う」が「嫌い」に転化しているだけ。

うつ病も、脳が「自己保存」のくせで、自分を守ろうとしていると、思うことで、克服できる。

「嫌だ」「疲れた」とグチを言うなど、否定的な言葉は、脳にマイナスのレッテルを張る。自分が言っても、周囲が言うのを聞いても、脳にとって悪い影響を与える。

グチから新しい発想が生まれることはない。「否定的な言葉をいっさい、使わない」

努力してでも笑顔を作ると、否定的な感情が生まれにくいので、脳の力を発揮できる。「出勤前に必ず、鏡の前で最高の笑顔をつくること」

上司や指導者にこそ、相手の話に耳を傾ける力、相手の立場に立って考える力、「自分の立場を捨てる」という器の大きさが求められる。

A10神経群は脳の疲労を除去する中枢とつながっている。興味のあることをやったり、ポジティブにいると、脳の疲労がらまらない。

その3.言われたことをコツコツやる

「ごほうびが得られそうだ、得るためにがんばろう」と脳が考えると、それがモチベーションになり、思考力や記憶力を存分に発揮できる。自分から頑張ろうという主体性が伴うと、次報酬神経群が働く。

主体性がポイント。

うれしいと感じることが自己報酬神経。人のためになるとき、貢献心が満たされるとき、それを「自分にとっての報酬」ととらえて、自己報酬神経群は機能する。

競争の助長は、脳が機能するための貢献心を、損得勘定にすり替えている傾向がある。行き過ぎた成果主義は、本来脳がもっている力を削ぐことになりかねない。

自己報酬神経群い働きをうまく活用するためには、物事をもう少しで達成できるという時にこそ、「ここからが本番」と考えることが大切。脳にとって、途中で「完成した」「できた」「達成した」といった言葉は否定語である。

物事を達成する人と達成しない人の脳を分けるのは、この「まだできていない部分」「完成するまでに残された工程」にこだわるかどうかである。

北京オリンピックの北島選手らの指導で、実際に「そろそろ終わりだ」という情報を与えると、脳の血流が落ちる現象がはじめてとらえられた。

「無理かもしれない」という考えも否定語でNG。「なぜ難しいのか」を考え、対策に意識を集中すること。

「勝った」と途中で思うこと、「負けるかもしれない」と思い浮かべてしまうと、脳ははたらかない。

最初に「100%以上、130%を目指す」という心持ちでスタートすると、集中力が増し、脳の達成率がアップすることができる。

目的と目標を明確に区別すること。達成すべき目標や、今日はに何を達成したのかを具体的に言えるようにしておく必要がある。「頑張る」は目標ではない、意味不明な言葉。

脳を正しくがんばらせるには、「具体的に何をするか」「いつまでにするか」「今日は何をするか」などの目標を明確にする必要がある。

目的と目標の両方を定め、紙に書いてはっておくなどして、脳に対してははっきりとがんばるべき方向性を決めることを習慣づける。

目標は手近いに、具体的に。

一度目標を決めたら、変えずに、一気に達成する。目標をころころ変えると「自己保存」のくせが働き、「どうせまた目標が変わるかもしれない」という気持ちが生まれ、全力投球できなくなる。

上司や指導者に従順になるな。自己報酬機能は、主体性をもって、考えたり行動したりしないと機能しない。「自分から」というスタンスを持つことが必要である。「失敗したら自分の責任である」という覚悟の意味も。

緊張感は身体の調子を上げる。リラックスしてはいけない。 緊張→交感神経が刺激され→アドレナリン放出→肝臓がグリコーゲンを分解→エネルギーとなるブドウ糖生成

息を吸うと交感神経が強く働き、息を吐くと副交感神経が強く働く。過度の緊張は交感神経が勝ってる→副交感神経を高めるためにゆっくりと長く息を吐く→緊張がほぐれる。

マニュアル人間は主体性が欠如。自分で考えることが大切。

結局、
目標と目的を明確にし、
ゴールを意識せず、
主体的に、自分がやってやるという意思をもって、
達成のしかたにこだわる、
目標の達成に向けて一気に駆け上がる。

結果にこだわらず、プロセスにこだわる。

その4.常に効率を考えている

「ダイナミック・センター・コア」とは思考を生む脳の機能の集まり。

脳の中では、「ダイナミック・センター・コア」の機能によって「考え」や「心」や「信念」といった形のないものが生まれる。

「ダイナミック・センター・コア」で繰り返し思考される。すばらしい考え、独創的なアイディアや新たな発見は、何度も何度も思考することによって生まれる。

効率性が過剰に重視され、くりかえし考え、吟味することを無駄と考える風潮があるようです。しかし、効率だけを求めていては独創性は生まれません。「必要な無駄」がある。

試験でいくら点を取れても、社会で力を発揮できるとは限らない。

本は、「いかにたくさん読むか」ではなく「いかにいい本を繰り返し読むか」に重点をおくべき。

思考を深める際には、「『統一・一貫性』に縛られていないか」と冷静かつ客観的に検証するスタンスを持つ。自分を疑う視点を持つ。

自分より立場が下の人が言う意見には、なかなか素直に耳を傾けられないもの。自分と異なる意見を聞いたからと言って、気分を害する必要はないはず。それどころか、思考を深めるために大切な「自分を疑う」という視点を提供してもらえるのであるから、脳のパフォーマンスを上げたいなら歓迎すべきこと。

人間の脳には、あまり重要でないと判断した記憶は3〜4日経つと忘れる仕組みがある。他人と意見がぶつかったときや迷いが生じたときは、いったんそれについて考えるのをやめ、4日たってから改めて考えたほうがよい。整理し、4日間離れ、戻ってきて考え直すのです。

その5.やりたくないのに、我慢して勉強する

記憶には、「作業記憶」「体験記億」「学習記憶」「運動記憶」の4種類あり。

「体験記億」「学習記憶」「運動記憶」はすべて脳が働く必要があり、脳で作られたイメージを記憶するイメージ記憶。前頭前野で理解された情報が、「ダイナミックセンターコア」において思考されることによって、記憶が生まれる。記憶には思考が必要。プラスの感情というレッテルを張り、よく考えたことは忘れにくい。

記憶機能をつかさどる海馬回は「短期記憶中枢」、人間の記憶は忘れやすいもの。海馬回のすぐ近くにある「扁桃核」は危機感や悔しさを感じる機能を持ち、海馬回を本気で働かせ、人間の脳のポテンシャルを引き上げるトリガーになる。

好きなこと、感動したこと、主体的に取り組んだこと、心を込めたことは、記憶に深く残せる。一方、「我慢して勉強している」という状態では、どんなにがんばっても、脳がもっている記憶力を働かない。記憶力を上げたいなら、我慢は禁物。

さまざまな情報を重ねることで、より強く記憶する仕組みを脳は持っている。関連性をつけることも記憶を助ける。

「完璧に覚えたかどうか」を確認するためには、「覚えたことを人にきちんと説明できるか」「3日経っても覚えたことを言えるか」を判断基準にする。

記憶力を高めるには、
「脳神経細胞の本能を磨く」「感性を磨いて理解力を上げる」「達成のしかたにこだわり、達成率をアップする」「くりかえし考え、思考力を高める」

人間は「体験記奥にひっぱられやすい」という落とし穴がある。「成功体験に引っ張られていないか」「失敗の経験によって、チャレンジする勇気を損なっていないか」ー物事を考えるときや行動を移す時は、この2点をチェックする習慣をつける。

その6.スポーツや絵などの趣味がない

空間認知中枢の隣に数字を処理する中枢があるため、空間認知能が低い人は、数学に弱い傾向がある。

正しい姿勢、水平な目線を維持すると、物事を正確に理解したり、身体をコントロールしたりすることがしやすくなる。美しい立ち姿や歩き方などを鍛えるのは、文武両道につながる。

姿勢を正すコツは「いつでも真上に飛び上れる状態」を意識すること、左右の肩甲骨を結んだ線が、地面に対して平行になるように意識すること。目線は水平になり、集中して人の話を聞いたり、勉強したりといったことが楽にできるようになるはず。

絵を描くことは、観察する対象物との距離を測ったり、縮小率を考えたり、形や角度を正確にとらえたり、色合いを把握したりと、空間認知脳をフルに使う。者を正確にとらえるトレーニングとしても大変効果的。

字を雑に書くことは、空間認知脳を低下させる習慣.

言語中枢の空間認知脳は、よくしゃべることによって活発に働く。寡黙でいることはメリットではない。

その7.めったに人をほめない

脳の神経細胞は、周囲の神経細胞と無数の回路を作るとともに、長い軸索で遠くの神経細胞に情報を伝える。

脳はその構造にスモール・ワールドと同じしくみを持ち、脳内で神経細胞同士が瞬時に情報を伝え合うことを可能にしている。

情報を伝え合った細胞の間では連鎖的に発火が起きているという理論がある。神経細胞が情報をやり取りしながら同時に発火する。この「同期発火の連鎖」によって、脳内の情報がまとまるという考えがディースマンによって1999年に提唱された。

大脳皮質の神経細胞の情報→必ずA10神経群に伝達され感情のレッテルつける→、前頭前野に伝わり感情が生まれる→大脳皮質全体の神経細胞に情報がフィードバック→同期発火→考えがまとまる。

相手の発する情報を受け取った脳は相手と同じように脳神経細胞を同期発火させる→感情が伝わる

「統一・一貫性」のクセにより相手に合わせようとするため。

相手と「感情」を同期発火させることなく、「思考」を同期発火させて相互理解することはできない。

相手の立場に立つ力は、「持って生まれるもの」ではなく、「鍛えることでしか身につけられないもの」

「自分が好きなこと」と「相手が望む世界観や達成したいこと」が一致できれば、スムーズな意思疎通が可能になる。

同期発火を起こすポイントは、プラスの感情を込めて人に伝えることと、相手の自己報酬神経群を活性化させることにある。

コミュニケーションを良くするには、脳の仕組みに基づいて、「意識的にどんどんほめること」

「厳しくあたって統制を取るべきだ」との考えは、「反抗されたくない」という考えの表われといえる。

人は違いがあるからおもしろく、また違いを持っているからこそ、それぞれに才能を発揮するもの。その違いを認めて、ほめる力を養うべき。

感情豊かに、ときには自分の立場を捨て、言葉を尽くして人と相対するーそんな人間性を磨ければ、コミュニケーション力は飛躍的に高まる。



以  上