人生の流儀 城山三郎

人生の持ち時間は限られている。その中で、時間を忘れるほどの陶酔をどれほど多く持ったかで、人生の価値が決まるような気がする。『打たれ強く生きる』

時代に合わせて生きるのではなく、わが生き方をしかと選び、根気よく歩み続ける。そうした骨太な人生に、時代の方から頭を下げて、歩み寄ってくる、という気がしている。『生き残りの条件』

人生の姿勢は、無用ときは、小さく低くしておくに限る。『成算あり』

順序さえ踏んで行けば、世の中おおよそのことは、やり遂げられる。走ったり飛び越そうとしたりするから、失敗するのだ。水たまりだって、歩いて渡れば、まちがはいない。『学・歴・年・不問』

人生の成功は、どこに行ったというんじゃなくて、どういう旅をしたかっていうことですね。『プロフェッショナルの条件』

人生の持ち時間に大差はない。問題はいかに深く生きるか、である。・・・まずは会社からも家族からも離れて、一人の時間を作ること。そこで何かをしてみることが、深い生き方への第一歩となるに違いない。『嬉しうて、そして・・・』

興味本位で生きる、興味本位で眺める。その軽やかさこそ、人生をドラマにし、詩にします。『男たちの好日』

動いているもの、流れているものは、くさらない。くさるよりはやく流れてしまう。人生だって、絶えず流れて走っていなくちゃ。『価格破壊』

漱石が好きだったというイギリスの作家スターンの警句を、このころから、私は我が身に言い聞かせるようになった。
「形式にこだわるには、人生は短すぎる」(スターン、英国の作家)
と。ここでの、「形式」とは目に見えるものだけでなく、慣習とか世間の目もふくめ、人間を外から規制する諸々のものを指す、と考えていい。『無所属の時間で生きる』

「静かに行く者は健やかに行く。健やかに行く者は遠くまで行く」(ワルラス:経済学者、『打たれ強く生きる』より)

わたし『かもめのジョナサン』の著者リチャード・バックの言葉を思い出す。
「たいへんだったが、しかしすばらしかったといえる人生を送りたい」『打たれ強く生きる』

善き戦争はなく、悪しき平和というものもない。『落日燃ゆ』

「不安定ということは、人間らしいということです。口幅ったいようですが、むしろ、こういう不安定さの中に生きてこそ、人間としての尊厳が感じられる気さえするんです」『今日は再び来らず』

「失敗はしようがありません。というより、失敗の数を重ねた者ほど成功するんじゃありませんか。失敗をおそれる人、失敗にくじける人が、本当の失敗者ですよ」『成算あり』

心労を伴わないものは、単なる労働なのだ。『打出小槌町一番地』

男にとって大切なことは愚直さですよね。『失われた志』

挫折のない人生はない。いや、挫折は人間を大きくする肥料でもある。『わたしの情報日記』

ていねいに戦うとは、事前に周到な準備をするだけでなく、勢いに任せて戦わないことである。『打たれ強く生きる』

「ひとりでは何もできぬ。しかし、ひとりが動かなければ何もできぬ」『挑戦』

「一人では耐えられぬことも、百人まとまれば耐えられる」『男たちの好日』

「花王」の中興の祖、丸田芳郎氏が社長時代の新人社員への忠告
会社の仕事とは別に、何か研究なり勉強を生涯持ち続けるようにすること。
電話で済まさず、必ず手紙を書くようにすること。電話はうわのそらでも掛けられるが、手紙は相手の人のことを思い浮かべないと書けない。『無所蔵の時間で生きる』

あわてて読んで、ふり回されることはない。放っておいて、くさるものはくさらせる。情報氾濫の社会であれば、「省く」ことを心がけないと、身を滅ぼす。『わたしの情報日記』

尊敬するに足るひとを、一人でも二人でも多く持てるということーそれは、人生における何よりもの生きる力になることだろう。『男子の本懐』

背伸びして視野を広げているうちに、背が伸びてしまうこともあり得る。それが人生のおもしろさである。『アメリカ生きがいの旅』

がっぷり四つに組めば、「部下のくせに」とか、「親に向かて」などといったものは消え、一対一の裸の人間だけが残る。相手の人間への興味だけが残る。『もう、きみには頼まない』

「人間は、どこか見どころがあるはず。それを見て使うのが、上司の役目だ」
「少なくとも三回はチャンスを与えてやるべきだ」『男たちのも経営』

絶対正しいことや、絶対正しい人間が、この世に存在するはずがない。すべては不完全である。不完全だから、人間であり、不完全な人間が少しずつでも補い合って生きて行くのが、人生というものである。『わたしの情報日記』

溺れている者を助けるには、もがいている中は放っておいて、溺れきってぐったりしてから助けるのが賢明だ。ビジネスでも同じ事さ。『神武崩れ』

人間しゃべれば必ず自己弁護が入る。結果として、他のだれかの非をあげることになる。『落日燃ゆ』

新しい英雄というべきシンボリック・マネージャーには、「どういうひとがふさわしいか。
人間通であること、忍耐強いひと、淡々たる人柄であること。『打たれ強く生きる』

大きい器かどうかということは、有能なブレーンをどれだけ持ったかということでしょうね。『歴史にみる実力者の条件』

魅力を感じさせる人々に共通のもの
常に生き生きとしていること、いつも在るべき姿を求めていること、卑しくないこと。ポストに執着するのも驕りもまた一種の卑しさである。『静かなタフネス10の人生』

組織には野性の血と夢が必要になる。・・・野性的人間を持たぬ組織は衰弱する他ない。『野性のひとびと』

「堅実」の敵は、情実主義である。情実に負けて「堅実」を乱すことは、真っ先に排斥されねばならない。『野性的人間の経済史』

これからの人間の条件は、
アリであること。アリのように黙々と勤勉に働く。
トンボであること。複眼構造をもって物を見なくてはいけない。
しかもなお人間である。人間としてのあたたかさと優しさをもっていなくてはいけない。
アリであり、トンボであり、しかも人間であるという三条件を満たさないと、これからの人間は通用しなくなってきている。『午前八時の男たち』

人間には、まるくとも、どこかに角がなければならぬ。まるいだけだと、ころびやすい。正しいことは、ゆずってはならぬ。『雄気堂々』

焦らず、あきらめず、毀誉褒貶にとらわれず、黙々と歩み続ける―事を成すのは、こういう男ではないのか。『歴史にみる実力者の条件』

人間の能力とは努力でしかない。『価格破壊』

無償の努力。これを持続してやまなければ、期せずして大きな収穫が得られる。『わたしの情報日記』

流れに任せて、同じ川を二本の丸太のように流れて行けばよいと思っている。寄り添って流れることもあれば、ぶつかることもあるだろう。先になったり、後になったりすることもあるであろう。とにかく、むきにならず無理もせず、長い長い川を楽しんで流れて行くーそれが夫婦だと思っている。『重役養成計画』

日本では、親子の関係が、あまりにもあいまいというか、一体化しすぎるのではないだろうか。
グスタス・フォス『日本の父へ』新潮社
親たちが、それぞれ個人生活を全うし、子供を個人として主体的に生きさせる。親と子の関係をそうした目で洗い直すことが、いまわれわれの社会でも求められているのではないだろうか。『素直な戦士たち、後記』

女の生意気なのと、男の粗野な暴力―この世で醜いものの両横綱。『わたしの情報日記』

趣味は、人生に生きる力を与えてくれる。『盲人重役』

ただの一度の人生で、数多くの別の人生を経験させてくれる―文学のありがたさである。『わたしの情報日記』

以上