誰か 宮部みゆき

具体的な事象を離れて俯瞰したとき、「何があったか」ではなく、「どのように見えるか」ということの方に心を寄せてしまう、世間というものの気まぐれさ。

「隠し事は難しいですね」と、彼女は言った。
「それは善人の証拠ですよ」と、私は言った。
隠し事は難しいのではない。辛いのだ。

子供はすべての暗闇にお化けの顔を見い出す。。。。だから子供が何かを怖がったとき、親たるもの頭から笑いとばしてはいけない。

こんな素晴らしい才能の持ち主でも、寿命が尽きれば死ななくてはならない。神様は、そういう点でだけ厳密に公平なのね。そんなの、残酷なような気がするわ。

人生の成功も幸せも、山っ気でつかめるものじゃない。だからおまえも、結婚相手を選ぶときは、よくよくそのことを考えろって。山っ気とか野心とかは薬味みたいなもんだから。あった方が人生が美味しくなる。だけど薬味だけじゃ一品の料理にはならないんだって。

男の人ってみんなロマンチストですよね。手に入れたものはみんな宝物だけど、てにいれられなかったものは、もっともっと宝物なんですよ。

元気で長生きの老人は、往々にして話がくどい。

舅と嫁の軽快な丁々発止を聞いていると、甘酸っぱいような気分になった。それはたぶん、羨ましいという感情なのだろう。いつか私も、こんな老人になれるだろうか。こんな老後を迎えられるだろうか。人生の最晩年に、こういう幸せをつかむためには、今のうちから何をしておけばいいのだろう。

日記なんてもんじゃない、、、、、思ったことを書くんじゃなくて、起こったことを書く。思ったことを全部書いてたら、そりゃ三日もすればバテてしまいますな。

私らみたいな弱い立場の人間には、警察がどんなに残酷で容赦ないものか、私はよく知ってるんだと言いました。事情なんか酌んじゃくれない。

彼女もわかっていたのだ。言われるまでもなく、心では知っていた。それでも、誰かの口からそう言って欲しかったのだ。わたしたちはみんなそうじゃないか。自分で知っているだけでは足りない。だから、人は一人では生きていけない。どう使用もないほどに、自分以外の誰かが必要なのだ。

秘密は人を孤独にするのだ。

もう大丈夫だ。もう過去は追いかけてこない。誰にも知られないまま、闇が呑みこんでくれた。

男と女はね、くっついていると、そのうち品性まで似てくるもんだよ。だから、付き合う相手はよく選ばなくちゃいけないんだ。

下手の長糸、上手の小糸

もともと宮部作品には、わたしたちが生きる現実の、どうしようもなく残酷な側面が必ず盛り込まれる傾向があった。受け入れるのは辛いが、「ある」以上は目をそらすことができない現実である。

以上