秘密 東野圭吾
自分が失うのは妻なのか娘なのか、はっきりさせてくれと誰かに言いたかった。それがわからぬ以上、深い悲しみとそれを昇華できない空しさだけが、いつまでも彼を襲うことになる。 p.50
ほら、あなただって時々いうことがあるじゃない。若い頃にもっと勉強しておけばよかったって。同じことを、あたしだって考えないわけじゃないんだよ。 p.162
こんなふうにもう一度人生をやり直すチャンスなんて、ほかの誰にも与えられないと思う。この奇跡を無駄にしたくないのよ。 p.164
同じ職場で同じ仲間たちと同じ仕事をし続けていると、時々世界から取り残されたような気になることがある。そんな時にたとえ短い時間でも会社の外に出ると、自分が今どこにいるのかを確認できるのだ。 p.172
自分の置かれている境遇に耐えられそうにない時には、誰か恨みや憎しみをぶつけられる相手がほしいものなのよ。 p.183
一つ破ると、二つ破るのも三つ破るのも同じだと思っちゃうでしょ。そうしてどんどんだめになっていっちゃうのよね p.221
世の中には、素晴らしいものが本当にたくさんあるのよね。そんなにお金をかけなくても幸せになれるものだと、世界観が変わっちゃうものだとかが簡単に手に入る。どうして今まで気がつかなかったのかなと思っちゃう。 p.222
会社ってのは人生ゲームだよな。会社にいて出世するってのは、人間が歳をとるってのと同じことだと思うよ。出世したくないってのは、歳をとりたくないっていうことなんだ。 p.269
昔自分と文也との間に血の繋がりがないと聞かされた時、父親の気持ちになれるかどうかということばかり考えた。自分が愛する者にとって幸せな道を選ぶという発想がなかった。あんなに文也のことが好きだったのに、俺はなんという馬鹿だったのかと思う p.373
何かを失う時は、いつもあっという間なのだ。 p.451
直子 君は消えていないのか。ただ消えたように振舞っただけなのか。 p.436
以 上
|