かまいたち 宮部みゆき
解説 笹川吉晴より
家庭になんらかの形で欠損のある若者。家庭の欠損によって、人間のネガティブな部分を知ってしまった彼らは同年代の友人たちよりも、場合によっては大人た
ちよりも悪意を見抜き、逸らすことなく見つめる目を持っている。欠損が彼らに知る能力を与えるのである。
そういう痛みを背負っでる人というのは、人に対して優しい。
欠損が知る能力を与え、それによって哀しみを経験する。
現代に失われつつある、共同体の中での関係性復活への希求を、別の形で、すなわち、怪異を通して描いている。
主人公たちはそれぞれ何らかの形で欠損を抱え、思慮深い年長者によってその欠陥の埋め方を、あるいは欠損と向き合って生きていく術を教えられる。
人間の弱さ、哀しさを敢えて受け容れ、それでも人間を信じていきたいと願う切実な祈り。
以上
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