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東京都市大学 都市生活学部×一般社団法人 オープン主催イベント「『誰もがデザイナーである』とはどういうことか?」速報レポート

2026年9月3日(木)16:30-19:30|SHIBUYA QWS

9月3日の本イベントに、たくさんのお申込みとご関心をいただき、ありがとうございました。200名を超える方々に会場でご参加いただき、50名を超える方々にキャンセル待ちでお待ちいただいていました。

本ページでは、当日の議論と場の雰囲気を速報レポートとしてお伝えするとともに、当日の記録動画をYouTubeで公開しています。ぜひご覧いただき、ご意見・ご感想をお寄せください。(アンケートご回答の方はこちらから

0|当日の動画

1|本イベントでは、何を問いかけたのか

開会挨拶:野村裕氏(内閣府 経済社会総合研究所 顧問)。幸福の追求を一人ひとりだけに委ねず、社会のあり方や、人と人がどう共にあるかを考える必要性が投げかけられました。

問題提起:木村篤信氏(東京都市大学 都市生活学部/一般社団法人オープン/一般社団法人日本リビングラボネットワーク)。「Design Capability」(それぞれの人の可能性)と「Enabling Ecosystem」(それらが花開く条件)の関係をどう捉え、実践につなげるかを問いとして提示しました。

中心となった問いは、一人ひとりがもつ可能性や力を、社会のなかでどう立ち上げていけるのかということでした。人を「課題を抱えた存在」としてだけ見るのではなく、「能力や可能性をもつ存在」として捉える。そのうえで、個人の努力だけに委ねず、その力が発揮される環境・関係・制度をどうつくるかを考えました。

2|Design Capabilityから、協働を支える社会へ

マンズィーニ氏は、「誰もがデザイナーである」という考え方を、個人の能力の話だけでなく、社会の変化に関わる力として捉えました。日々の暮らしのなかで人びとがDesign Capabilityを発揮し、他者と協働しながら新しい解決や関係を生み出すことが、Social Innovationにつながっていくと説明しました。

基調講演:エツィオ・マンズィーニ氏(ミラノ工科大学 名誉教授/DESIS Network プレジデント)。Design Capability、Social Innovation、Collaborative Servicesなどを手がかりに、協働・近接性・ケアを支える社会のあり方が提示されました。
QWSのスクランブルホールには、企業、行政、市民団体、大学など、多様な立場の参加者が集まりました。

その際に重要になるのが、個人の力を孤立させず、協働へとひらく環境です。マンズィーニ氏は、協働(collaboration)、近接性(proximity)、ケア(care)といった関係の質を挙げ、専門家や行政が一方的にサービスを提供するのではなく、市民も能力をもつ主体として関わるCollaborative Servicesの方向性を提示しました。こうした議論は、後半で検討された「公共」の新しい役割へもつながっていきました。

3|理論を、日本の実践から読み直す

原口悠氏(一般社団法人オープン/一般社団法人大牟田未来共創センター/渋谷国際都市共創機構 フェロー/シブヤスタートアップス株式会社 シニアアドバイザー)。マンズィーニ氏の理論を「人」を軸に捉え直し、日本の実践との接続点を示しました。

原口氏は、Design CapabilityからLife Project、協働、社会変化へとつながる見取り図を提示し、「協働すること」を個人の善意ではなく、社会が支える条件として考えられないかと問いかけました。また、日本における具体的な実践のあり方を探るために、3人の登壇者の実践がどのように位置づくのかについて概観されました。

4|日本の三つの実践から、可能性が立ち上がる条件を探る

続いて、地域福祉、行政、都市デザインという異なる現場から、松崎氏、都竹氏、吉江氏が実践を紹介しました。分野や方法は異なっていても、本人だけを変えようとするのではなく、関係や環境、資源の組み合わせを変えることで、人の力が立ち上がる条件をつくるという共通点が見えてきました。

実践報告:松崎亮氏(三股町社会福祉協議会/コミュニティデザインラボ所長)。一人の困りごとや「できること」と、地域の人・空き家・道具・仕事を結び直し、新しい活動や関係を生み出す実践が紹介されました。

松崎氏は、「本人(私)の主体性が生まれる地域づくり」を掲げ、一人ひとりの困りごとや「やってみたい」と、地域にある人・場所・道具などを結び直す実践を紹介しました。なかでも、既存の雇用の仕組みになじみにくい一人の母親の「ミシンができる」という力を起点に、地域の資源をつなぎながら仕事と関係を生み出した事例は、本人を変えるのではなく、周囲との関係を編み直すことで可能性が立ち上がる姿を示していました。

実践報告:都竹淳也氏(岐阜県飛騨市長)。個人の力、地域資源、行政の役割をどう結び直すかを、飛騨市の多様な実践から紹介しました。

都竹氏は、「全員、自分の力を必ず発揮できるようになる」という信念を、福祉、教育、人事などさまざまな行政実践に展開してきたことを紹介しました。学校作業療法では、うまくいかないときに本人を変えようとするのではなく、「あなたが悪いんじゃなくて、作戦が悪い」と捉えて方法や環境を変える。また行政運営についても、固定した計画に従うより、目標を持ちながら出会いや機会を捉えて次の一手を生み出す「わらしべ長者モデル」が提示されました。

実践報告:吉江俊氏(東京大学大学院工学系研究科 講師)。都市や空間が人の行為に与える影響を捉えながら、計画と実践の関係を問い直しました。

吉江氏は、人の行為を可能にしたり制約したりする都市空間に着目し、「Capabilityは、人間だけでなく街にも宿っている」と提示しました。人が環境から影響を受ける一方、その環境もまた人の行為によってつくられていく。さらに、あらかじめ決めた未来へ一直線に進むPlanningではなく、その時々の状況に応じて道を選びながら進む「Planning as Wayfaring」という考え方を紹介しました。

5|クロストークで深まった論点

クロストークの一場面。マンズィーニ氏と日本の実践者が、理論と現場を往復しながら互いの言葉を重ね、会場に開かれた問いとして議論を深めました。

マンズィーニ氏からは、Designを一つの方法論やツールキットに閉じ込めないための比喩として、「Sailing(帆走)」が示されました。向かう方向をもちながらも、風や波、その時々の状況に応じて進路を調整していく。この感覚は、3つの実践にも重なりました。

クロストークでは、田坂克郎氏(シブヤスタートアップス株式会社 CEO)が、マンズィーニ氏の応答を日本語で整理し、Sailing、3つの実践の違い、そして「Powerを分配すること」という論点ををわかりやすく接続しました。

さらに議論は、権限をもつ側が「意見を聞く」だけでなく、他者が実際に行動できるようにPowerを分配すること、そして誰もが能動的に参加するためにはTime and Energyが必要であることへと広がりました。ここから、協働を支える「公共」の新しい役割が重要な論点として立ち上がりました。

白熱したクロストークの会場風景。その後の会場との質疑も予定時間を越えて続き、登壇者と参加者の対話は最後まで熱を帯びたものとなりました。

6|問いを持ち寄り、次のつながりへ

登壇者・関係者の集合写真。異なる立場の人々が一つの場に集い、理論と実践をつなぐ時間となりました。

講演やクロストークで交わされた問いは、プログラムの終了とともに途切れませんでした。登壇者・関係者・参加者が立場を越えて言葉を交わし、それぞれの現場や関心へ引き寄せながら対話を続けました。

懇親会では、宇都正哲氏(東京都市大学 都市生活学部)による乾杯挨拶をきっかけに、登壇者と参加者、参加者同士の対話が続きました。本編で語られたテーマを自身の研究や地域、仕事に引き寄せながら、会場の各所で新しい会話が始まっていきました。

マンズィーニ氏や登壇者の周囲にも参加者が集まり、講演で生まれた疑問や自身の実践について、直接言葉を交わす場面が生まれました。こうした偶発的な対話も、今回の場から次の実践へつながる大切な時間となりました。

終了後も多くの参加者が会場に残り、所属や世代を越えた交流が続きました。イベントで共有された問いが、一人ひとりの次の行動や、新たな連携のきっかけへとひらかれていきました。
懇親会では、学生を含む参加者がマンズィーニ氏を囲み、書籍や当日の議論をきっかけに直接対話する場面も生まれました。

改めて、お申込み・ご参加いただいた皆さま、そして今回の企画に関心を寄せてくださった皆さまに感謝申し上げます。今回の機会を一つのきっかけとして、ここで生まれた問いを、皆さまと一緒にさらに探究し、次の実践につなげていければと思います。

参考)イベント開催情報 https://peatix.com/event/5088740