研究紹介

ゲルマニウム(Ge)を使ったナノエレクトロニクスで社会貢献を目指しています

ICT、AI、IoTを支えるハードウェア技術

現在、情報通信技術(ICT)やAI、IoTを根本で支えているものは、ハードウェア技術であり、シリコン半導体ナノテクノロジーと言えます。昨今の爆発的な情報通信量の増大により、データセンターからエッジデバイスまで、コンピュータの消費電力膨大化が世界的に喫緊の問題となっています。そこで私たちは、シリコンテクノロジーに、シリコンを超える性能を有するゲルマニウム(Ge)を導入することで、半導体チップの高性能化、超低消費電力化を目指します。

研究紹介記事

2020年 研究シーズ・オンラインマッチング展示会
「光暗号通信を可能にするGeスピンLED」

2020年 プレスリリース(大阪大学との共同研究)
電子スピン寿命の延長を実現 ー半導体スピンデバイスのキーテクノロジーを実証ー
(東京都市大学 プレスリリース)
(大阪大学 プレスリリース)
2017年 EE Times Japan(大阪大学との共同研究)
2016年OPTRONICSオンライン記事
「絶縁膜上の大面積Geウエハーを作製」

2016年 プレスリリース
「半導体集積回路のシリコンに代わる大面積ゲルマニウムウェハー作製技術の開発に成功」

2016年JST新技術説明会 資料
「超低消費電力・半導体集積回路のための革新的ゲルマニウム・ウェハー開発」

2016年5月30日付 日本経済新聞
2015年10月5日付 日本経済新聞 電子版
2015年8月20日付 日経産業新聞
半導体成長の物理的限界に、若き研究者が挑む  (2015年3月)
2014年7月 ゆうわ
2013年11月 地方紙 各紙
2013年6月13日付 日本経済新聞
2012年 プレスリリース

各研究の紹介

Geプラットフォーム(GOIウェハー)上の光電子融合デバイス集積

シリコンウェハー上に、絶縁膜を介してゲルマニウム(Ge)を形成する技術により、Geウェハー(Ge-no-Insulator,GOIウェハー)を実現します。このGOIウェハー上には、電子デバイスと光デバイスを融合集積化(Ge-OEIC)することができるので、高速CMOS光配線によって高性能、低消費電力チップが実現できます。

歪みGe-on-Insulatorウェハー

Ge高速デバイス、高効率発光デバイスの実現には、高品質なGe結晶をSi基板上に形成することが不可欠です。Geの結晶成長と貼り合わせ技術を利用することで、高品質かつ結晶歪みを有する歪みGe-on-Insulator基板の形成に成功しました。Siウェハーを置き換えることが期待できます。さらにこの基板の上に、SiGe/Geヘテロ構造の形成も可能です。

歪みSiGe/Geヘテロ構造の結晶成長

歪みを有するSiGe/Geヘテロ構造は、バンドエンジニアリングによる電気特性や発光特性、さらにスピン特性の向上をもたらし、様々なデバイス応用が期待されています。しかしながら、歪みの影響により結晶欠陥が発生しやすく、その抑制が必須となります。我々は、独自に開発したGe疑似基板パターニング法により、歪みSiGe層内に発生する欠陥(クラック)を完全に抑制することに成功しています。

歪み Si/Geチャネル高速・高機能MOS

分子線エピタキシー(MBE)装置を用いて、高品質なSi/Ge半導体ヘテロ構造を結晶成長により作製し、歪みGeチャネル構造において半導体の中でも最も高い正孔移動度を達成しました。Ge量子井戸層に閉じ込められた2次元正孔ガス(2DHG)を利用することで、量子デバイスへの応用が期待されます。さらにMBEと原子層堆積装置(ALD)を組み合わせることで、超高品質ゲート絶縁膜/Ge界面を実現し、超高移動度GeチャネルMOSFETデバイスを目指します。

歪みSiGe/Geヘテロ量子井戸構造発光デバイス

LSIの超低消費電力化に向けて、シリコンチップ上の光配線が期待され、そのためにSi基板上にモノリシックに集積可能な発光素子実現が求められています。そのために、Si上に結晶成長可能である歪みSi/Geヘテロ構造、さらにSiGe/Ge多重量子井戸構造を開発し、Si上高効率発光デバイス光配線の実現を目指しています。

歪みGeマイクロブリッジ発光デバイス

本来間接遷移型半導体であるGeは、結晶歪み導入によるバンドエンジニアリングによって、直接遷移型に近づけることが可能で、それによって幅広い光デバイス応用への道が開けます。これまでに、Si上GeやGOIウェハーの選択エッチング加工により、マイクロブリッジなどのマイクロ構造を形成し、非常に大きい歪みの導入を達成しています。さらに共振器やMEMSデバイスとの融合による新機能・高性能デバイスを目指しています。

光暗号通信や医療応用へ向けた円偏光発生スピンLED

円偏光発生デバイス(チップ)は、次世代光暗号通信の発光源や、癌細胞検出などの医療応用に向けて期待されています。その中、我々はシリコンゲルマニウム(SiGe)円偏光発生スピンLEDを開発しています。通常、偏光を発生させるには大きな光学素子が必要ですが、スピンLEDが実現すれば、円偏光をSiのICチップ内で発生させることができ、円偏光利用デバイス実用化への道が拓けます。 円偏光を発生させるためには、スピンを持った(スピン偏極した)電子をLEDに注入する必要があり、強磁性体電極を利用したスピンLEDを開発しています(※)。最近、室温で非常に強いEL(電流注入)発光の観測に成功してます。
(※) 大阪大学 浜屋研究室との共同研究

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